泥棒と警備員Ⅵ
おはこんにちばんは!!
さあ今回もいってみましょう!!
「泥棒と警備員Ⅵ」
バンッ…!!!
すさまじい轟音を響かせて閉まったドアに驚き、振り向く3人。
入ってきたのは、自分たちが神様と呼ぶ人物だった。
そのことに一瞬安堵するが、その人が尋常でない顔色をして息を切らし、その場に座り込んだため、慌てて駆け寄った。
「か、神様!?どうしたの!」
「けがしたの!?」
「大丈夫?具合悪い?」
震える細い手首や肩を掴み、揺さぶると、だんだん息がおちついてきた。
「…あ、ああ…大丈夫だよ…。」
ふう…とため息をつくと、3人を安心させるため、1人ずつ頭を撫でた。
「悪い、ちょっと具合が悪くて…立ちくらみがしただけだ。心配しなくていい…」
「そっか…ほんとに大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ。…ごめんおそくなって。お腹すいただろ、ほら、夕飯買ってきたから、食べよう。」
「う、うん!」
立ち上がり、3人を促した。
夕飯を食べ終わり、いつものように3人の遊びに付き合っていると、夜も更け、子供達は規則正しい寝息をたてて眠りについた。
「ったく…ジェシカは相変わらず寝相が悪いな…おいおい、メアリーを蹴るな。苦しがってる。…グミはいつも寝相がいいな。」
大きな布にくるまり、3人並んで寝ているのを眺めるのは心が落ち着く。
頭を軽く撫で、物音を立てぬよう静かに外へ出た。
今夜は月が出ており、街灯のないこのあたりでも、気休め程度だが、ほんのりと明るかった。
扉を背に、その場に座り込み、これからの事を考える。
守らなくては…あいつらを…。
この場所にいれば、今日のように、気づかぬうちに25番に後をつけられてしまい、いつかバレてしまう可能性がある。人の哀しむ様をみるのが好きな25番のことだ。あいつにバレたらすぐに国家にいいつけられてしまう。国家からしたら、破壊予定だった人間兵器の実験体と、指名手配犯をいっぺんに捕まえられるのだから、万々歳である。
「だからって、他に何処へいけばいいんだよ…逃げるにしても、いつどこで何者に遭遇するかもわかんねえし…それに、こんなに都合のいい場所が他にあるとも限らないし…」
しかしそこでふと、あることを思い出した。
「まてよ…?あいつら3人の顔を知っているのは、あの研究所の奴らと僕だけなんだよな…?でも、研究所の奴らは僕があの時すでに全員消し去った…。だから、必然的に、この世に僕一人だけってことになるじゃないか!」
それならば、彼女たちの容姿はこの街をあるいても問題のないものになる。誰も人間兵器のなりかけなどとは思わないだろう。
「なんだ…それがわかれば、あとは簡単じゃないか。」
僕の頭に、ある「作戦」が生まれた。そして、それと同時に、笑みが零れた。
僕は立ち上がり、「作戦」の最初の準備にとりかかるため、懐からナイフを取り出した。
そして、その切っ先を、己に向けた。
ザシュッ…!!!
____翌朝____
チュンチュン…
鳥の鳴く声がきこえ、グミは目を覚ました。
窓の外にみえる色は灰色で、今日は曇りなのだとわかった。
「あ…れ?神様…?」
ふと、いつも誰よりも早く起きている神様の姿がないことに気が付いた。
途端に不安に襲われ、慌ててジェシカとメアリーを揺り起こす。
「ジェシカ、メアリー!起きて!!大変、神様がいないの!」
唐突におこされ、しばらくとろんとした目でグミを見つめたが、状況が理解できると、泣きそうな顔になり、飛び起きた。
「嘘っ…⁈神様どこいっちゃったの⁈」
「置いていかれちゃったのかな…私達が、神様いつも、疲れてるのに、遊んでってわがままばっかり言ってたから…」
「やだっ…ごめんなさい、神様、帰ってきて!もう、わがまま言わないから!」
3人はパニックに陥り、わぁわぁと喚き出した。
しかし、その喧騒は、すぐにおさまった。
何故なら、入口の扉が、ガチャリと音を立てて開いたからだ。 3人は反射的にそちらをみると、涙を浮かべながら微笑んだ。
「神様‼︎」
そこには、すこしだけ容姿のかわった神様が立っていた。
「…どうした?何騒いでるんだ?」
神様は、小さく微笑んだ。
___胸に、大きな秘密を抱えながら。
Ⅶに続く
FLOWER! 第21話 ~夏休み~
はいこんにちは!!
モルモルと傭兵さんの話が全然すすんでないって?
…ごめんなさい。さっさとかきます(´;ω;`)
あれ書いてると切なくなってくるんですよ!!まじで!!
レオン・レイン・コイル・ボルト「「「「言い訳乙」」」」
うるさいよう!!!
えー、とにかくがんばります!!
では、FLOWER!第二章の第一話、スタート!!
「FLOWER! 第21話 ~夏休み~」
「…はいそれじゃあ、HRおしまい~みんな、楽しい夏休みを過ごしてね~」
カザキの号令が終わると、生徒たちは歓声をあげて立ち上がった。
「よっしゃー!夏休みだー!!」
「ヤッホーィ!!」
「今日午後プール行かない?」
「いいねいこいこー!」
夏服へとすっかり衣替えの済んだクラスメイトの歓喜の表情を眺めながら、いまだに黒い長袖を着ているライトはため息をついた。
「はあ…高校生になってもやっぱみんな夏休みはよろこぶんだな…」
「なーに大人ぶってるのよ。ライトだって嬉しいくせに。」
そんなライトの頭を軽く小突くミルは、相変わらず黒レースがたっぷりとあしらわれたゴスロリ服を着ているが、ちゃんと夏用である。
「ライトってば、なんで夏なのに長袖着るの?暑苦しいわよ…」
「いやいやいや!!黒レースの手袋つけてタイツはいてるお前にいわれたくねえよ」
「ゴスロリファッションは下手に肌を見せすぎちゃいけないのよ!知らないの?」
「しらねえよ!!」
いつも通りきゃんきゃんと言い合いを繰り広げると、いつも通りカラーとネストがやってきた。
「いやいや、夏なのにお熱いですにょ~お二人さん!」
「ほんまやね…」
にやついた二人に「ち、ちげーよばか!!」「そんなんじゃないよお!」と否定する二人。
しかし顔が真っ赤なので、余計にやにやとされる。
「しっかし、ライトはほんまに長袖しか着ないせいでもやしやな。そないな身体で海なんか行けるんやろか?」
「うるせえもやしいうな!!…て、海?」
どうして海が出てきたのかがわからないといった顔のライト。
カラーが「お!」と言って、ライトの肩に腕を回す。
「そうなのだよライたん!海だよ海!!俺っちたちといい夏過ごそう!!」
「は!?話が全然みえねえよ!!」
「実はね、俺っちとネスたんとレオたん、ミヨたんヒミたんで毎年トウイたんの別荘で夏休みをすごしているのだにょー!」
「!?べ、別荘!?」
「やっぱりトウイくんすごいなあ…」
「でねでね、今年はライたんとミルたんとも一緒に行きたいな~って思って、トウイたんに言ってみたら、オーケーでたんだにょー!」
「は!?ま、まじで!?」
「本当に!?」
そろって驚きの声をあげる二人。
すると後ろからライトとミルの肩を三人が押した。
「もーちろん!100人入っても大丈夫なくらい大きいから!!」
「レオ、それどこのイ〇バ物置ww」
「 でも本当に余裕で入りそうだよ~」
「れ、レオ!」
「ミヨちゃんとヒミちゃんも!」
「いよーっす!勿論、お前らもいくよな?」
「行こうよ!!」
「そうだよ!!」
「と…トウイ君の迷惑にならないのなら…いきたいかなー…なんて」
「お、俺も…」
三人の言葉にしどろもどろに答えると、ちょうどそこに本人がやってきた。
「迷惑じゃない…。むしろ人数は多い方が楽しいから、来てくれると嬉しい」
トウイは嬉しそうにそういって笑った。
カラーはこぶしを振り上げ、
「よーーーし!!みんなで楽しい旅行だにょーー!!」
と叫んだ。
____九条家____
冷房器具の稼働音のみが響く大きな部屋で、回転椅子に腰を掛け、机に肘をつくトウイの父・春臣(はるおみ)と、高級そうなメイド服に身を包み、礼儀正しく気を付けをしている一人の女性が向かい合っていた。
しかし、空気が張り詰めている、という訳ではなく、どちらかというと柔和な雰囲気が漂っている。
春臣が、口を開く。
「…今年も、トウイが級友たちと避暑地の別荘に行くらしい。夏休み故できるだけトウイたちには気を使わせず、自由にしてやりたいが…何かあってからでは遅い。そこで、花紅学園で優秀な成績を修め、メイドとしても優秀な君に、是非とも付き添いを頼みたいのだが…いいかな?
『コトネ』君。」
メイドが、恭しく頭を下げた。
「はい。かしこまりました。」
続く!✿
《新キャラプロフィール》
名前:織都 琴音(オリト コトネ)
九条家に勤めるメイド。主にトウイの世話を任されている。
髪と目の色はシフォンケーキのような色をしており、常に、頭にリボン、白いエプロン、黒いワンピースの、九条家のメイド服を着ている。
トウイが小さい頃からトウイの世話をしているので、メイドの中では一番親しい。
花紅学園の卒業生で、元四天王の一人。歴代でも、屈指の強さを誇る生徒だった。
メイドとしても優秀。普段優しい分、怒ると怖い。
キャラデザとキャラ設定は繭が考えてくれました!主は携帯を変えてしまったので、画像が送られないですすみません。
FLOWER! 第20話 ~初めて~
こーんにーちわ(∩´∀`)∩
更新遅くてすみません…てか、こんない必死にかいても読んでくれるのは数人て…
つらい!!(´;ω;`)
ということでわたくし、pixivをはじめました(^u^)
まあ文才のない私がかいたところで読者の数なんかきっと片手で数えられるくらいでしょうけど…
まあ、なにはともあれ、FLOWERやっていきましょう!!
「FLOWER! 第20話 ~初めて~」
「いや~!ライたんもミルたんもお疲れ様だにょー!」
「初めての実技試験はどうやった?」
無事一学期の期末試験が終わり、生徒達は下校をはじめた。
帰り支度をしながら、例の4人は話し合っていた。
「うん!緊張したし、失敗もしちゃったけど、すごく楽しかったよ!」
ネストの問いかけにミルは笑顔で答える。
しかしライトは何も答えず、しばらくうつむいていた。
「ライたん?どうしたんだにょ?もしかして、落ち込んでるのかにょ…?」
「へ?あ、ああ悪い、なんだって…?」
カラーがライトの顔の前でパタパタと手を振ると、やっとライトが反応した。
「なんや?負けて落ち込んでるちうより、何ぞ考え込んでる表情やね。」
ネストが怪訝そうな顔をする。
ライトは「ああ、ちょっとな…」とまごついた返答をした。
そこでミルは、「あ」と声をだした。
「もしかして、柴葉君のこと…?」
「え!?なんでわかった?」
「あ、やっぱり…。あの試験が終わってから、なんかライトだけじゃなくて、柴葉くんも浮かない顔してたから、試合中になにかあったんじゃないかなって。」
「…そ…っか。」
「な、なになに、何の話?」
状況が呑み込めていないカラーとネストに、ライトは試合中起きたことを話した。
「柴葉君が、『さみしそうだった』…ねえ。」
「リクたんはあんまり表情かわらないけど…対人関係で、なにかつらい思いをしたことがあったのかもしれないにょ…」
「やっぱそう思うよな…。なんかそれが気になっちまって…」
はあとため息をつきどうしたものかといった表情のライトを見て、ネストがふんと鼻を鳴らす。
「そんなん、直接本人に聞けばええやん。うだうだ考えるなや。」
「は!?」
思いもよらない言葉に驚くライト。
「柴葉の奴の鞄、まだ残ってんねん。どこぞにいるんやろ。早く探して話でもなんでもしてこい。」
「え、えええ…お前、ほんと怖いもの知らずだな!」
「やかましい!!さっさと行かんかボケ!」
ネストに怒られ、ほとんど追い出される形で教室を後にした。
「はあ…しょうがない。確かにずーっと気にし続けるよりはさっさと話して解決したほうがいいか。
さて…あいつ、一体どこにいるんだよ…。」
まずはリクを探すことから開始した。
_5分後_
「あ…いた。」
「定番かな」と考えた屋上の扉を開けると、早速リクを見つけた。
扉の開く小さな音は、ヘッドフォンを付けたうえ少し離れたところにいるリクには聞こえなかったようで、ぼんやりと空を眺め続けている。
ライトは一瞬戸惑ったが、ふうーと長い溜息をついて、「よし」と小さく決意した。
「おい…柴葉。」
割と大きな声で呼んだためか、リクはすぐに気づいた。
吃驚したように目を見開く。
「なッ…にしにきたんだよ…。もうみんな帰ったろ。」
「それはこっちのセリフだ。お前こそこんなとこで何たそがれてんだよ。」
「別にたそがれてねえよ!」
「…勝ったのはお前で、敗者が目の前にいるのに、嫌味の一つも言わないって…お前らしくねえじゃん。」
「お前俺をなんだと思ってんだよ…」
「違うのか?」
「そこまで下衆じゃねえよ。なんだよ、嫌味言ってほしいのか?…ドMだな…」
「はッ!?ばか、変な誤解してんじゃねえよ!」
「…ていうか、ほんとに何しに来たんだよ。もしかして、俺を探しに来たのか?」
リクが笑いながら「はは、冗談だよ」という前にライトが、「実は、そうなんだよ」というと、リクは驚愕の表情になった。
「は…まじかよ、なんでまた…」
「お前と、話したくて…」
するとリクは何かを察したようで、眉間にしわを寄せて立ち上がった。
「お、おい!どこいくんだよ!!」
「俺は何も話すことはねえよ…」
「待てよ!!」
リクはすたすたと扉のほうへ歩いて行ってしまった。
ライトは、気をつかったのに一向に対話する気のないリクにイラつき、
「この野郎…!おいわかったぞ!お前、人と関わるのが怖えんだろ!この臆病者が!」
と怒鳴った。
するとリクは立ち止まり、勢いよく振り返った。
「お前にっ…なにがわかんだよ!!」
ライトは、リクのここまで大きな声をきいたのは初めてだった。
リクはぎりぎりと歯を鳴らし、ライトを睨みつけている。
「ただ少し人と関わるのが苦手で…だから自分の好きなことをやってただけなのに…。なんでっ…なんで暴言吐かれなきゃいけねえんだよ!!俺がいつお前らに迷惑かけたよ!?パソコンいじってりゃ根暗呼ばわり…、人の輪に入らなきゃ不気味がる…!自分と違う人種だって存在するって、なんで理解できない!?だから頭の悪い人間は嫌いなんだよ!!ちょっとは人の気持ち考えろよ!!それで、そういう奴らに限って、自分が害を被ったら憤慨して…!
…なんでだよ…なんなんだよ…。
…1人でいることは、そんなにいけない事なのかよ…。」
リクは怒鳴り、顔をしかめ、しゃがみこんだ。
屋上のコンクリートの床に、水滴が落ちる。
雨ではない。
その水滴は、リクの目から滴り落ちているものだ。
日の少し傾いた寂しげな色の空の下、吹きすさぶ生ぬるい風の音だけが屋上に響いている。
沈黙を破ったのは、ライトだった。
「なあ、カラーって奴わかるだろ?うちのクラスの。」
「…は?」
こいつは何を言い出すんだと言わんばかりの顔でライトをみつめるリク。
「あいつって、前回の中間は、なんか…ネストの暗示だかなんだかですげえ成績よかったけど、本当は元素記号も諺もまともにわからねえ、とんでもない馬鹿なんだよ。」
「…知ってる。会話のレベルも低レベルだ。すぐに頭の悪い人間だと理解した。」
「ああ。お前の嫌いな、『頭の悪い人間』だよ。」
「…何が言いたい?」
ライトの言いたいことがわからず、怪訝そうな顔をする。
ライトは、困ったような笑顔を浮かべ、口を開いた。
「俺がさっき、試合中のお前のことが気がかりだって話をしたら、その頭の悪い人間は、『リクたんはあんまり表情かわらないけど、対人関係でなにかつらい思いをしたことがあるのかもしれない』って言ったんだよ。」
「……え…?」
リクは一瞬何を言われているのか理解できず、硬直する。
「だからよ、俺が言いたいのは、頭が悪かろうが何だろうが、お前を軽蔑したりしないで心配してくれるやつは、ちゃんといるってことだよ。」
「……」
「…俺だって、カラーほどじゃねえけどれっきとした馬鹿だよ。…でも、お前の事別に気味悪いとか、根暗なんて思わねえよ。」
「ひ…人は、嘘がつけんだよ!そんなこと言われたって、簡単に信じられるわけえねえだろ!」
「…お前が信じたくねえならそれはそれでいいよ。ただの俺の独り言だと思って受け止めてくれ。」
「…なんで…」
「なんでって、俺はお前じゃないんだからお前が何を思うかなんてわからねえよ。お前みたいに読心術も使えねえし。」
ふうとため息をつき、頭を掻くと、ライトは歩き出した。
そして入り口付近まで来ると、しゃがみこんでいたリクを丁寧に抱えて立たせた。
「…俺が気になったのは、試合中、強気なお前がなんであんな顔したかだ。とりあえず理由がわかってよかったよ。…邪魔したな。」
そう言って帰ろうと扉を開けた。
しかし、リクがライトを遮った。
「…まってくれ…。」
そう言ってうつむいたまま、ゆっくりとヘッドフォンをはずした。
「…お前…さっき、俺の事気味悪がらないって…根暗だって思わないって言ったよな。」
「ああ。言った。…嘘だと思ってんだろうが、残念ながら嘘じゃない。」
「…信じて…いいのか?」
リクは、ぽつりと呟いた。
ライトは一瞬呆気にとられたが、すぐにくすりと笑った。
「そりゃー、信じてくれんだったら、そうしてくれよ。」
そういうと、リクは泣き笑いの様な顔をあげた。
「…ああ、そうするよ。」
相変わらず高所故強い風が吹いてたが、2人にはもう、気にならなかった。
「ありがとな…下総。」
「…お前、ほんとに柴葉だよな?試合の時と全然違う。こええ。」
「それをお前が言うか?…あ、そうだ」
「ん?なんだよ」
「…試合の時、色々言って…その、あれだ。…悪かった。」
「それもお互い様だなw」
「そうだな…はは」
2人がそんな話をしながら教室に戻ると、3人の見慣れた人影があった。
「あ、ライトと柴葉君、お帰りなさい~」
「おお!お帰りだにょー!待ってたにょー」
「その様子だと、うまく話し合いがまとまったみたいやね」
「なっ…!なんでお前らまだいるんだよ!」
「ふん!ミルとカラーが待つっていうから、流れで待っとっただけや!勘違いすな!!」
「でたなツンデレゴフッ」
「やかましい。ほな、帰るで!」
「ほーい!!」
「柴葉くん、帰ろう?」
「あ、ああ」
「ネストてめえ…おぼえてろよ!」
廊下でがやがやと5人が歩いていると、向こうから見慣れた4人がやってきた。
「おー!カラーたちじゃーん!テストおつー!」
「うえーいレオたーん!」
「私たちも終わって、今帰るとこー!ねね、一緒に寄り道して帰ろー!」
「きいてきいて、テストの時のトウイ、すごいかっこよかったんだよ!」
「ええ~みたかったなあ…」
「神威…残念がるほどのものじゃないぞ。ヒミとミヨも、過大評価しすぎだ。」
「おうおう、いつも通り絶好調だったんかいな。」
賑やかな人々にかこまれ、ライトとリクは顔を見合わせ、少し笑った。
こういうのも、結構いいものだ。と…
続く!✿
↓あとがき
はい!これにてFLOWER!第1章、「琴瑟調和」終了でーす!
いや意図したわけじゃないのですが、なんと20話ぴったりで終わりました。
奇跡ですw
さて、第2章 ですが、期末試験を終えたライトたちは、夏休みに入ります。
一体どんな(騒がしい)夏休みになるのやら…。
お楽しみに!!
「プロローグ」
何重もの頑丈な包装が施されたような毎日。
安全で、安心で、酷く退屈な毎日。
だが、そんな毎日に、一輪の花が咲いた。
『初めまして。今日から宜しくお願い致します、坊ちゃん。』
幼かった僕の目に映った彼女。
「許されない」とわかった今でも、僕は好きでいることをやめられない。
夏の暑さは、心を乱す。
心だけでなく、ルールも、常識も、何もかも乱れてしまえばいいのに。
…なんて。
【FLOWER! 第二章 「劫の夏、泡沫の恋」】
FLOWER! 第19話 ~期末試験 其の六~
「FLOWER! 第19話 ~期末試験 其の六~」
「な、なんか…ライたん、顔、こわくない…?」
遠くにいるカラーからでも気づくほど、ライトは尋常でない顔つきをしていた。
「いや、ライトだけやないで…。柴葉もなんか機嫌悪ないか?」
「うん…2人とも、どうしたんだろう…」
会話の聞こえない3人には、ないにがなんだかわからなかった。
一方、本人たちは、相変わらず互いに殺気をとばしていた。
「いってくれるじゃねえか…下総。どうなっても知らねえぞ?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」
2人が、同時に動き出した。
__1分後…__
「ほらほら、下総ァ!!さっきの威勢はどこいったんだよ!」
「ちょ、やめうわああああああああああ!!!!」
(ネストの策略通り)ライトはリクに猛攻撃されていた。
「(な、どういうことだよ!!柴葉のやつ!もしかして、ネストよりも強いんじゃ…)」
そこでライトは気づいた。
遠くで、ネストが涙を流して爆笑しているということに…
「ぎゃっははははは!!あかん!!腹痛いわwwwwww!!!」
「ちょ、ちょちょちょ!!ネスたん!?ライたんピンチなのになんでそんなに笑ってるんだにょ!?」
「(あのときネストちゃんが爆笑してたのは、このことか…)」
「お前、気づかなかったんか?うちがライトの練習付き合ったことあったやろ?そん時、うちはライトが本番で油断するように、わざと手ェ抜いてやったんや。」
「えええ!?ネスたんひどいにょー!!」
「ふん、ライトの奴が悪かったのに、うちから謝るわけがないやん。」
「そ、それは…」
「それにお前、元四天王のうちが、あないな素人に負けるとでも思ってたのか?」
「それは…なんかおかしいなとはおもってたにょ…でも、それだけライたんが強いのかなって思っちゃって…」
しどろもどろ弁解するカラーに、「つべこべ言い訳するな!!」とネストが一喝した。
「とにかく。うちはこの勝負、楽しませてもらうわ。」
そう言ってにやにやと厭らしい笑みを浮かべ、窮地に立たされているライトに視線を戻した。
「(まっさか…畜生ネストのやつ!!はめやがったなあああああ!!!)」
一方のライトは、漸くネストに騙されたということを理解し、怒りを覚えていた。
「(くっそ…あのあと調子に乗って余裕ぶっこいてたから、非常にまずい…。しかもこいつ、結構強い…!!)」
手も足も出ないライトをみて、嘲笑するリク。
「おいおい…お前、死ぬほど弱えな…ちょっとびっくりしたぜ。特例だっていうから焦ったけど、たいしたことねえな!」
「(しかもうぜえ。クソうぜえ。)」
とりあえずネストへの怒りはさておき、今は目の前のリクに集中することにした。
「(くっそ…俺の蕾は、相手の蔓や花をたたいて壊すしか能がねえ…。強度も速さもあるけど、それだけだ。どうすれば…どうすれば勝てる!?)」
あれこれ考えを巡らせているうちに、リクの攻撃がライトの蕾を襲う。
「おら。こねえならこっちからいくぞ。『電波砲(ラジオウェイブ)』!!」
「なッ…!?」
リクの放った微量の電気がライトの蕾にヒットし、次々に弾けていく。
「や、やべえ!」
全ての蕾が破壊されるのを防ぐため、必死によける。
「なんだよ、よけるだけか?攻撃して来いよ!」
「うっせえ!おらよ!!」
なんとか体勢を整え、蕾をリクの蔓に命中させる。
弾け飛ぶリクの蔓。
「よし!!」
ライトは漸く攻撃が当たったことに喜んだ。
…しかし
「『調達遅延(ローディングバグ)』」
リクがそう発した途端、リクの蔓を破壊したライトの蕾の動きが鈍くなった。
「な…なんだこれ!!動きが遅く…!?」
ライトが戸惑っているうちに、別の蔓によってライトの蕾が破壊される。
「ふう…頭の悪いお前にもわかるように説明してやるよ。俺の蔓に攻撃すると、相手の攻撃速度を遅くできる『バグ』が発生する。だから、遅くなったところで、別の蔓で電波砲を繰り出せばいいってわけだ。」
「なッ…!!どんなチート野郎だてめえ!!」
リクの攻撃の正体を知ったライトが、リクに噛みつく。
「(なんだってこんな相手にあたっちまったんだよ…!!)」
「あいつ…強いな。」
ぼそりとネストが漏らした。
「うん…たしかに強いにょ。」
カラーも同意する。
「壱零科…やったっけ?その技のなかでも、さらに幾つもの攻撃を兼ね備えとる…。」
ふむふむとうなずくカラーとミル。
しかし、その次の、「…ちーとばかし…悪いことをしたかな…」というネストの小さな呟きは、あちこちでリクへの賛美の声が飛び交っていたにぎやかな体育館では、隣にいたミルにしか聞こえなかった。
「なーんか…ギャラリーももう、お前のことはみてないみたいだし…そろそろあきらめたらどうだ?」
客席を見渡し、リクが嘲笑交じりにライトに問いかけた。
しかしライトは無言のまま、なにかを考えている。
「おい…。無視すんじゃねえよ。」
そういってリクは攻撃を放つ。
しかし、凄まじい速さでよけたライトの蕾には当たらなかった。
「おい、気づいてんだったら反応…」
「うるっせえなちょっと黙ってろ!!!」
額に青筋を浮かべたライトが、凄まじい剣幕で怒鳴った。
その迫力に一瞬気圧されたリクだが、すぐに口角を吊り上げた。
「は、はは…なんだよ。気丈にふるまってるふりして、実は内心泣きそうなんだろ?もう負けを認め…」
「だっから、うるせえっつってんのが聞こえねえのかこの野郎!!ヘッドフォンのコード引きちぎってやろうか!?ああ!?」
そう叫んで、蕾をリクの蔓にヒットさせる。蔓は弾け飛んだが、当然「バグ」によって動きが遅くなる蕾
「だーから…無駄だって言って…」
あきれたリクが、動きの遅くなった蕾に、電波砲を撃つ。
だが、その攻撃は、当たらなかった。
なぜなら、ライトが、遅くなった蕾に、「自ら別の蕾を当てて」、その蕾を遠くへとばしたからだ。
「な…別の蕾をあてて攻撃をかわしただと…!?」
そしてその隙に、さらにもう一本の蕾が、リクの『花』を襲った。
「しまっ…!!!」
パアアアアン!!!
「ちっ…さすがに一本じゃ全部は無理か…」
全ての『花』を破壊することはできなかったが、大部分を損傷させることができた。
「おい、柴葉!」
突然のライトの猛攻撃に唖然としているリクに、ライトが声をかける。
「さっき、『そろそろあきらめたらどうだ』って言ったよな?…わりいけどそれは無理だわ。」
「な…なんだよ…」
「馬鹿は馬鹿なりに必死にやってんだっつーの!第一途中であきらめたら…俺の事応援してくれる奴とか…俺の練習に付き合ってくれた奴とかに申し訳ねえだろうが!」
『なにずっとパソコンいじってんだよ根暗!』
『柴葉君って全然しゃべんないよねー。気味悪い。』
『超ぼっちじゃーん!かわいそ!ぎゃははは』
頭の悪い人間は嫌いだ。
自分たちと違う人種を見つけては蔑んで、平気な顔しているから。
「…そんな存在…俺にはいねえよ…」
だから、俺にはそんな感情、理解できない。
無反応になったリクを不思議に思ったライトだったが、むしろ好機だと思い、もう一度、蕾を光の速さで花へ放った。
バチッ…!!!!
しかし蕾は跳ね返された。
「な…なんだ今の!?」
「…『外敵防御壁(セキュリティウォール)』」
リクがぼそりと呟いて、顔をあげた。
「…だから俺は、自分のことしか信用しない。」
_____その目は、とても寂しげだった。
「お前…」
ライトがそのことに呆気にとられているうちに、リクが、ライトの最後の蕾を破壊した。
パアアアアン…!!
「勝者、柴葉凛久!!!!」
続く!✿
泥棒と警備員Ⅴ
こんにちはー
更新が亀並み…いや、亀よりおそいっすね…ごめんなさい。
では本編どうぞー
「泥棒と警備員Ⅴ」
それからというもの、僕は傭兵の仕事を辞め、独裁国家が侵略して分捕ってきたものをもとの持ち主に返す、国家からすれば「泥棒」という存在になった。返すものは、高価な宝石や王冠など。ものを返すたび、国家がどれだけたくさんのものを盗み、どれだけ卑劣なことをしてきたのかがわかった。
国家に見つかればただごとではないのだが、これが僕にできる唯一の偽善だった。
人は、守りたいものができると、こんなにもわかりやすく行動に出るのか…
そんなことを考えながら、今日の仕事を終え、人混みを避けながら家路を急いだ。
「今日の夕飯は…少しばかり奮発してしまった…。ま、たまにはいいか」
買い物袋を抱え、鼻歌交じりに歩く。
少し浮かれてすらいたかもしれない。
____だから、気づけなかったのだ。
そんな僕を観察している、人間の存在に…。
「よお『元』39番。随分楽しそうじゃねえか」
「!?」
突如発せられた聞き覚えのある声に驚き、振り返る。
そこには、気色の悪い笑みをうかべた25番が、壁にもたれかかった体勢で立っていた。
「てめえ…なに尾けてきてんだよこのストーカー野郎!!」
「ストーカーって…おいおい、大げさじゃねえの?」
「っるせえ!気持ちわりいんだよクソが。…なんのつもりだ?」
「んー?なんのつもりってそりゃ、急に傭兵やめちまったから、なんでかな~って気になってたところでお前を見つけたから…観察しようと思っただけだよ」
「…ざけんなよ!…クズが考えることはやっぱりクズだな。」
「なんでだよ~あのクソみたいな職業の中で、周りの奴等の観察すんのが唯一の楽しみなんだからよ~。」
「…もう仕事を辞めた僕を観察する必要はねえだろ…」
「女の子がそんな乱暴な口きくなよ~。あ、そうそう、で、なんでお前そんなに楽しそうにしてたんだよ。急に仕事辞めたことと関係あんのか?」
「別に…そんなことねえよ。くだらないお前の勘違いに付き合ってられるほど暇じゃねえんだよ。さっさと帰りやがれ。」
そう言ってまた歩き出そうと前を向いたが…
「嘘つくなよ」
立ち去ろうとした瞬間、髪の毛を引っ張られた。
視界がガクンとぶれ、鈍い痛みが走る。
相当強く引っ張られたようで、数本抜けた感覚があった。
「いっ…てえな何すんだてめえ!!ぶっ殺されてえのか!!」
「だからあ…そんな口きくなよ~仮にも女だろ?
…なあなあ、そんなに食い物買って、どうすんだ?お前ってそんなに1人で食うやつじゃないだろ?」
「はっ…!?」
たしかに、僕が抱えている買い物袋の中の食材は、僕1人では多い量だ。
だが、必死に取り繕う。
「ばーか、あれだ…買い溜めだよ…!」
「…顔色かわったな。図星か?あ、まさか男でもできたのか!?ひゅう~やるじゃねえか。男みたいなお前でもそばにいてくれるやつができたのかよ~」
馴れ馴れしく僕の肩に回している腕を、思いっきり払いのけた。
___まずい。
これ以上こいつと一緒にいたら…
僕はこいつを殺してしまう…。
いや、いっそ殺してしまおうか。
そうおもいたち、懐に潜ませたナイフに手をかけようとした。
しかし、脳裏にあの3人の顔がよぎり、なんとか拳を握り、踏みとどまる。
その代わりに、思いっきり睨みつけた。
「…くたばれ…糞野郎…」
そう言い残すと、僕はその場を立ち去った。
残された25番は、1人かすかにふるえていた。
そのふるえは、39番から発せられた凄まじい殺気に恐怖を覚えたことからきているが、その中に、喜びも混じっていた。
「こえ…つか、そんなにキレるってことは、やばいことでもやってんのか…?ハハ…観察継続だな。また他人の弱みを握れるチャンスだ…」
25番は、やはり気味悪く口角を吊り上げ、微笑んでいた。
「はあ…っはあ…」
全速力で25番から逃げ、先ほどとは違う裏道に座り込む。
「くそ…あの道化師野郎…!!もうあいつとは絶対遭遇したくない…な…」
先ほどまでの心の中の苛々した感情は、少し弱まっていった。
「…つかそれにしても、なんで前からあいつは僕につきまとうんだ…まあ、誰でもいいのかもな…本当にクズな奴。」
息を整えて25番に対する悪態をぶつぶつと呟いていると、不意に、少し離れた向かいの壁に、1枚の紙が乱雑に貼られているのが目に入った。
「…ん?なんだ…?」
貼り紙など、普段みても大したリアクションはとらないが、その日は何故か妙に気になり、その貼り紙をのぞきこんだ。
_____このとき、僕がこの貼り紙を見ていなければ…僕はどうなっていただろうか
貼られていたのは、指名手配書だった。
指名手配犯の写真のしたには、貧乏の僕でなくとも、とんでもない額だとわかる懸賞金が書かれていた。
でかでかとその紙に貼られた写真の人物は…
鋭い三白眼、適当に二つに結った長髪、国家に従う傭兵のしるしである、重そうな軍服についた星のピン…
まぎれもない、「僕」だった…____
「ぼ…僕が…指名手配犯!?まさか…もうばれたのか!?」
防犯カメラや警備員の目はうまくかいくぐってきたつもりだったのに…!!
もしくは、確証はないが、僕が辞めたすぐ後からものが盗まれるようになったから、と、僕を疑っての行動か…
なんにせよ、これでは街を出歩くことができなくなってしまう。
生活の不自由が確定すると、僕はなんだ腹が立ってきた。
「な…なんだよ、指名手配って…!ふ、ふざけんな!こっちはお前ら国家が盗んだものをもとにもどしてるだけじゃねえか!!そうだ、泥棒はお前らだろうが!!そのくせまるでこっちが悪人みたいに言いやがって…!!」
『ソウダ…悪人ハ、貴様ダ…』
「!?」
突如、背後から、黒く禍々しい気配がのしかかってきた。
人間の声とはとても思えないような言葉の羅列に、思わず息をのむ。
『貴様ハ、一体何ガシタインダ…?今マデシテキタコトヲ悔イテ、神ニ赦シヲ乞ウテイルノカ…?自身ガヤッテキタコトノ、罪滅ボシヲシテイルノカ…?』
心臓が激しく波打っていることがわかっているのに、何故か生きた心地がしない。
呼吸が荒くなっていることがわかっているのに、何故か生きた心地がしない。
気持ちが悪い…
眩暈がしてくる…
足が震える…
…恐ろしくて、振り返ることができない。
だが、不思議なことに、自分の脳内では、言葉を発するものの存在が想像できた。
星のピンがついた黒い布を纏い、鈍く光る大鎌を持った髑髏…
国家の手駒である、恐ろしい亡霊の姿が…。
クツクツ、クツクツと不気味に笑い、
亡霊は、尚も言葉を発し続ける。
『貴様ノ様ナ汚レタ人間ガ善意ヲ装ッテ行動シヨウト、貴様ノ犯シタ罪ガ帳消シニナルワケガ無イ。』
体が硬直し、滴る汗をぬぐうことすらできない。
体温が急速にさがっていく感覚を覚えた。
…以前、傭兵の頃に老父と赤ん坊を助けようとしたのが上司に見つかった時のようだ。
何かをしなくてはいけないのに、何もできない。
亡霊は、続ける。
『ダカラ…』
耳元で、囁かれた。
『ソンナコトヲシテモ無駄ダ』
僕は、なんとか振り返った。
しかしそこにはなにもおらず、暗い裏道が続いているだけだった。
途端に足の力がぬけ、その場にへたり込んだ。
「いま…の、は…何…だ」
_そんなことをしても無駄_
その言葉が、深く僕の心に突き刺さった。
痛いほど激しく打つ心臓を抑える。
荒い呼吸を落ち着かせるために、深い呼吸をゆっくりと繰り返す。
だが、目尻に浮かんだ水滴の存在には気づけなくて、拭うことはできなかった。
Ⅵに続く…
FLOWER! 第18話 ~期末試験 其の五~
こんにちわ~
全然進まなくてすいません…
では、本編どうぞ~
「FLOWER! 第18話 ~期末試験 其の五~」
「勝ったのはミルちゃんか~お疲れ様ー!」
「二人ともすごいよー」
「…でも…ミルちゃん、嘘ついてたよね…」
「うん…謝ってはいたけど…ねえ」
決着がつくと、賛美の声にまじり、ミルに対する不満の声も聞こえてきた。
そのことに顔を青くして、しょんぼりと下を向くミル。
しかし、ヤヅルはそんなこと聞こえてもいないようで、心配そうな顔をした。
「ミルちゃん!?どしたのそんな暗い顔して…」
「え…?」
ミルは予想外の言葉にびっくりして顔をあげる。
「わ…私、昔から本気の勝負事になると性格悪くなって…その、今回も嘘ついちゃったし…」
ライトはその言葉にああ、となる。
そういやあいつ、昔から勝負中にちょっと騙したり口調強くなったりしたこともあったな…
ま、ズルしたり相手に危害を加えたりとかはしなかったけど。
しかしヤヅルは不思議そうに首をかしげる
「え?ミルちゃんは嘘なんかついてないよ?だって、あたしが深く考えないで勝手に勘違いしただけでしょ?」
「え…」
ヤヅルの言葉に顔をあげるミル。
ヤヅルは、悔しそうだが、清々しい顔で微笑んでいた。
「負けちゃったのはすごい悔しいけど…やっぱ、ミルちゃんは強いね!ミルちゃんに敵うようにあたしももっと練習するよ!」
ミルは少し目を潤ませ、
「ううん、ヤヅルちゃんもとっても強かったよ!!ヤヅルちゃんが相手でよかった!」
と言った。
「えっへへ、そう言われると照れますなあ」
「えへへ…」
二人の雰囲気を見て、ギャラリーからの不満は聞こえなくなった。
そこで、カザキが「二人とも、そろそろ~」と言った。
「あ、はい!」
「はいはーい!」
二人が向かい合うのを見、「礼!!」号令をかけると、二人も、「「ありがとうございました!!」」と頭を下げた。
湧き上がる拍手に包まれながら、二人は戻ってきた。
「ミルたーーーーん!!!すごいにょ!!すごかったし、なによりもかわいかったにょーーー!!」
そう叫んでカラーがミルに飛びつく。
「わあ!びっくりした~!えへ、カラー君ありがとう~」
「疲れただろうから、俺っちのひざまくらでも…ぎゃん!!」
「どさくさにまぎれてセクハラまがいのこと強要すんなこのクソ猫!!」
「ネ、ネスたん、もしかして…妬いてる?」
「ぶっとばす!!」
…いいよな…終わったやつは呑気で…
和やかな雰囲気の中、まだ試験を受けていないライトは1人だけ、とてつもない疎外感に見舞われていた。
それに気づいたカラーが、にやにやしながらライトの肩に腕を回す。
「なになに~ライたん、顔色悪いにょ~?緊張してるにょ~?」
「うわあ超うぜえ!超殴りてえ!」
「えええ、理不尽だにょ~!でも、心配しなくてもライたんは大丈夫だにょ?」
「なんでだよ!まだわかんねえだろ…」
「だいじょーぶだいじょーぶ!なんたって、四天王のネスたんに攻撃できたんだにょ?それに、何度も練習してたじゃ~ん」
「う…まあ…それはそうだけど…」
「あとは、勝つのに必要なのは集中力と気合だにょ!ふぁいと!」
「その集中力をかき乱しているのはお前だろうが!!」
「ええー!?」
その様子を、ネストはとても面白そうにみていた。
それに気づいたカラーが、ミルに耳打ちする。
「…ねえミルたん…。なんかネスたんがめちゃくちゃ楽しそうなんだけど…なんでかわかる?」
「(…あの顔は…絶対なにかたくらんでる顔だけど…ほんとに、すごく楽しそうだから…黙っておこう。)うーん…わからないかな…」
ネストは、ライトをみつめながら、ひたすらにやついていた。
カラーの励まし(?)により少し気持ちの和らいだライトだったが…
待てども待てどもライトの順番は回ってこなかった。
そしてついに…
「では、まだ呼ばれていない2人、前にでてくださ~い」
最後の2人のうちの1人になってしまった。
ライトは立ち上がり、冷や汗をかくミルとカラー、膝を叩いて爆笑しているネストを一瞥し、無感情の顔で「…いってくる」といった。
そして2人が並ぶのをみると、カザキが手をあげた。
「これより、下総蕾都対、柴葉凛久(サイバ リク)の試合を開始します!両者、礼!!」
「「よろしくお願いします!!」」
そこで漸く、ライトはうつむいていた顔をあげた。
目の前に立っていたのは、ヘッドフォンをつけ、眼鏡をかけた男子生徒だった。
サイバ…か…あんま関わったことねえな。
たしか、窓際の席で、いつもパソコン弄ってる奴だったよな。
…つーか、これから試験なんだから、ヘッドフォンくらいとれよ…
ライトが心の中で愚痴を言うと、リクが口を開いた。
「…音量は小さいからお前の声は聞こえてる。特に問題はねえよ。」
「…は!?」
今…俺、声にでてたか!?
思っていたことをぴたりとあてられ動揺するライト。
まさか、こいつ超能力でも使えるんじゃ…
そう思っていると、またリクが口を開く。
「声にはでてない。あと、超能力も使えない。表情とか目線をみればたいていお前が何考えてるのかわかる…」
「ま…まじかよ。」
「でも…たいていの奴はそれで大体の事はわかっても、その一歩先まではわからない。だが俺みたいな頭のいい奴はその先まで理解できる。特に、お前みたいな馬鹿は考えることが単純だから読み取りやすくて助かる。」
………………いま、こいつ、なんて言った…?
「俺みたいな頭のいい奴」はこのさいどうってことない。
たしかにこいつの成績は、ネストに次いでクラス二番だ。
その、後…
「お前みたいな馬鹿」…?
聞き間違いの可能性も考え、念のため聞き返してみる。
「…いま…お前、俺の事、なんていった…?」
すると、眉を顰め、さも面倒くさそうに、
「だから、「馬鹿」って言ったんだよ。お前、たしか成績、学年80番にも載ってなかっただろ?練習授業も見てた限り失敗ばっかで、いつもお前と一緒にいる神威とかいう女のほうが全然頭のよさも実力もあるだろ。ああ、なんだ…怒ったのか。それは悪い。嘘をつくのは苦手でな。」
と吐き捨てた。
しかしリクの声はとても小さく、ぼそぼそとした喋り方だったので、少し離れたところにいたカザキには聞こえず、「二人とも~そろそろ『花』をつくってね~」と呑気に手を振った。
リクは「はいはい」と小さく返事をし、覇気のない「開眼」で蔓を出現させた。
銀色の光の粒子が飛び交い、電波に包まれたシルバーホワイトの花が現れる。
ライトも「開眼」をし、蕾のついた深緑の蔓を幾つも繰り出した。
「『開花』!」
リクが花を開花させる。
「『壱零科(コンパニズム・サイエンサー)』…」
「『鞭蕾(ウィップバット)』」
しかしライトは『花』を形成させぬまま、最終ポジションについた。
ポジションについた2人を確認し、カザキが「試合開始!」と手を下げた。
早速リクが攻撃をしようと構えるが、そこで、ライトが『花』を形成させていないことに気づく。
「…は?お前何してんの…?まさか、それで戦うつもりかよ…?まさか、『花』をつくることすらできなかったのか…?はッ、まじかよだっせ…。ま、そしたら、今出てる蔓、全部ぶっ壊して、さっさと終わらせ」
パアアンッ!!!!
リクは、最後までその言葉を言うことができなかった。
なぜなら、一瞬でライトの蔓が、リクの『花』から出ていた蔓や蕾を、「全て」破壊したからだ。
「……は?」
そこでカザキが、思い出したように、「あ、そうそう」と手を打った。
「リク君、ライト君はね、『花』をつくらなくても攻撃ができるいわば「特例」なの~。だから、特別ルールとして、ライト君と戦うときは、今ライト君が出してある蔓を、全部壊したらリク君の勝ちってことになるの~そこのところ、よろしくね~」
「…は!?「特例」…?「花を作らなくても攻撃できる」…?なんだよそれ…」
信じられない、というような顔のリク。
そんなリクを見て、今まで下を向いて表情を現さなかったライトが、顔をあげた。
「…なあ、頭のいいサイバ君よお…」
その顔は…____
笑っていた。
「始まる前、さんざん馬鹿にしてた自分より格下の人間が、自分の考えの範疇をこえた「特例」っていう存在だってわかったわけだけど…。ぶっちゃけ、どんな気持ちなの?悔しい?驚いた?生憎、俺はお前みたいに、相手の考えてることは読み取れないんだよな~。だって俺…
『馬鹿』だから。」
「…てめぇ」
続く!✿
《新キャラプロフィール》
名前:柴葉 凛久(サイバ リク)
ヘッドフォンをつけ、眼鏡をかけている。右手にはリストバンドをしている。
非常に自信家な性格で、頭の悪い人間が嫌い。普段は無口だが、そのような人種には、抉るような毒舌を吐く。
電子機器に強く、プログラミングが得意。
昔は、パソコンばかりいじっている自分の、周囲からの評価(人の目)が気になり、観察していたため、表情や仕草、目線などで人の思っていることを恐ろしいほど正確に当てる、「読心術」を習得した。
名前の由来:「サイバー」、「エレクトリック」から。
さてさて、また濃いキャラのご登場ですw
テスト
えー、ちょっと、画像の添付ができるているかどうか、テスト記事を投下しまーす。