FLOWER! 第19話 ~期末試験 其の六~
「FLOWER! 第19話 ~期末試験 其の六~」
「な、なんか…ライたん、顔、こわくない…?」
遠くにいるカラーからでも気づくほど、ライトは尋常でない顔つきをしていた。
「いや、ライトだけやないで…。柴葉もなんか機嫌悪ないか?」
「うん…2人とも、どうしたんだろう…」
会話の聞こえない3人には、ないにがなんだかわからなかった。
一方、本人たちは、相変わらず互いに殺気をとばしていた。
「いってくれるじゃねえか…下総。どうなっても知らねえぞ?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」
2人が、同時に動き出した。
__1分後…__
「ほらほら、下総ァ!!さっきの威勢はどこいったんだよ!」
「ちょ、やめうわああああああああああ!!!!」
(ネストの策略通り)ライトはリクに猛攻撃されていた。
「(な、どういうことだよ!!柴葉のやつ!もしかして、ネストよりも強いんじゃ…)」
そこでライトは気づいた。
遠くで、ネストが涙を流して爆笑しているということに…
「ぎゃっははははは!!あかん!!腹痛いわwwwwww!!!」
「ちょ、ちょちょちょ!!ネスたん!?ライたんピンチなのになんでそんなに笑ってるんだにょ!?」
「(あのときネストちゃんが爆笑してたのは、このことか…)」
「お前、気づかなかったんか?うちがライトの練習付き合ったことあったやろ?そん時、うちはライトが本番で油断するように、わざと手ェ抜いてやったんや。」
「えええ!?ネスたんひどいにょー!!」
「ふん、ライトの奴が悪かったのに、うちから謝るわけがないやん。」
「そ、それは…」
「それにお前、元四天王のうちが、あないな素人に負けるとでも思ってたのか?」
「それは…なんかおかしいなとはおもってたにょ…でも、それだけライたんが強いのかなって思っちゃって…」
しどろもどろ弁解するカラーに、「つべこべ言い訳するな!!」とネストが一喝した。
「とにかく。うちはこの勝負、楽しませてもらうわ。」
そう言ってにやにやと厭らしい笑みを浮かべ、窮地に立たされているライトに視線を戻した。
「(まっさか…畜生ネストのやつ!!はめやがったなあああああ!!!)」
一方のライトは、漸くネストに騙されたということを理解し、怒りを覚えていた。
「(くっそ…あのあと調子に乗って余裕ぶっこいてたから、非常にまずい…。しかもこいつ、結構強い…!!)」
手も足も出ないライトをみて、嘲笑するリク。
「おいおい…お前、死ぬほど弱えな…ちょっとびっくりしたぜ。特例だっていうから焦ったけど、たいしたことねえな!」
「(しかもうぜえ。クソうぜえ。)」
とりあえずネストへの怒りはさておき、今は目の前のリクに集中することにした。
「(くっそ…俺の蕾は、相手の蔓や花をたたいて壊すしか能がねえ…。強度も速さもあるけど、それだけだ。どうすれば…どうすれば勝てる!?)」
あれこれ考えを巡らせているうちに、リクの攻撃がライトの蕾を襲う。
「おら。こねえならこっちからいくぞ。『電波砲(ラジオウェイブ)』!!」
「なッ…!?」
リクの放った微量の電気がライトの蕾にヒットし、次々に弾けていく。
「や、やべえ!」
全ての蕾が破壊されるのを防ぐため、必死によける。
「なんだよ、よけるだけか?攻撃して来いよ!」
「うっせえ!おらよ!!」
なんとか体勢を整え、蕾をリクの蔓に命中させる。
弾け飛ぶリクの蔓。
「よし!!」
ライトは漸く攻撃が当たったことに喜んだ。
…しかし
「『調達遅延(ローディングバグ)』」
リクがそう発した途端、リクの蔓を破壊したライトの蕾の動きが鈍くなった。
「な…なんだこれ!!動きが遅く…!?」
ライトが戸惑っているうちに、別の蔓によってライトの蕾が破壊される。
「ふう…頭の悪いお前にもわかるように説明してやるよ。俺の蔓に攻撃すると、相手の攻撃速度を遅くできる『バグ』が発生する。だから、遅くなったところで、別の蔓で電波砲を繰り出せばいいってわけだ。」
「なッ…!!どんなチート野郎だてめえ!!」
リクの攻撃の正体を知ったライトが、リクに噛みつく。
「(なんだってこんな相手にあたっちまったんだよ…!!)」
「あいつ…強いな。」
ぼそりとネストが漏らした。
「うん…たしかに強いにょ。」
カラーも同意する。
「壱零科…やったっけ?その技のなかでも、さらに幾つもの攻撃を兼ね備えとる…。」
ふむふむとうなずくカラーとミル。
しかし、その次の、「…ちーとばかし…悪いことをしたかな…」というネストの小さな呟きは、あちこちでリクへの賛美の声が飛び交っていたにぎやかな体育館では、隣にいたミルにしか聞こえなかった。
「なーんか…ギャラリーももう、お前のことはみてないみたいだし…そろそろあきらめたらどうだ?」
客席を見渡し、リクが嘲笑交じりにライトに問いかけた。
しかしライトは無言のまま、なにかを考えている。
「おい…。無視すんじゃねえよ。」
そういってリクは攻撃を放つ。
しかし、凄まじい速さでよけたライトの蕾には当たらなかった。
「おい、気づいてんだったら反応…」
「うるっせえなちょっと黙ってろ!!!」
額に青筋を浮かべたライトが、凄まじい剣幕で怒鳴った。
その迫力に一瞬気圧されたリクだが、すぐに口角を吊り上げた。
「は、はは…なんだよ。気丈にふるまってるふりして、実は内心泣きそうなんだろ?もう負けを認め…」
「だっから、うるせえっつってんのが聞こえねえのかこの野郎!!ヘッドフォンのコード引きちぎってやろうか!?ああ!?」
そう叫んで、蕾をリクの蔓にヒットさせる。蔓は弾け飛んだが、当然「バグ」によって動きが遅くなる蕾
「だーから…無駄だって言って…」
あきれたリクが、動きの遅くなった蕾に、電波砲を撃つ。
だが、その攻撃は、当たらなかった。
なぜなら、ライトが、遅くなった蕾に、「自ら別の蕾を当てて」、その蕾を遠くへとばしたからだ。
「な…別の蕾をあてて攻撃をかわしただと…!?」
そしてその隙に、さらにもう一本の蕾が、リクの『花』を襲った。
「しまっ…!!!」
パアアアアン!!!
「ちっ…さすがに一本じゃ全部は無理か…」
全ての『花』を破壊することはできなかったが、大部分を損傷させることができた。
「おい、柴葉!」
突然のライトの猛攻撃に唖然としているリクに、ライトが声をかける。
「さっき、『そろそろあきらめたらどうだ』って言ったよな?…わりいけどそれは無理だわ。」
「な…なんだよ…」
「馬鹿は馬鹿なりに必死にやってんだっつーの!第一途中であきらめたら…俺の事応援してくれる奴とか…俺の練習に付き合ってくれた奴とかに申し訳ねえだろうが!」
『なにずっとパソコンいじってんだよ根暗!』
『柴葉君って全然しゃべんないよねー。気味悪い。』
『超ぼっちじゃーん!かわいそ!ぎゃははは』
頭の悪い人間は嫌いだ。
自分たちと違う人種を見つけては蔑んで、平気な顔しているから。
「…そんな存在…俺にはいねえよ…」
だから、俺にはそんな感情、理解できない。
無反応になったリクを不思議に思ったライトだったが、むしろ好機だと思い、もう一度、蕾を光の速さで花へ放った。
バチッ…!!!!
しかし蕾は跳ね返された。
「な…なんだ今の!?」
「…『外敵防御壁(セキュリティウォール)』」
リクがぼそりと呟いて、顔をあげた。
「…だから俺は、自分のことしか信用しない。」
_____その目は、とても寂しげだった。
「お前…」
ライトがそのことに呆気にとられているうちに、リクが、ライトの最後の蕾を破壊した。
パアアアアン…!!
「勝者、柴葉凛久!!!!」
続く!✿