泥棒と警備員Ⅵ
おはこんにちばんは!!
さあ今回もいってみましょう!!
「泥棒と警備員Ⅵ」
バンッ…!!!
すさまじい轟音を響かせて閉まったドアに驚き、振り向く3人。
入ってきたのは、自分たちが神様と呼ぶ人物だった。
そのことに一瞬安堵するが、その人が尋常でない顔色をして息を切らし、その場に座り込んだため、慌てて駆け寄った。
「か、神様!?どうしたの!」
「けがしたの!?」
「大丈夫?具合悪い?」
震える細い手首や肩を掴み、揺さぶると、だんだん息がおちついてきた。
「…あ、ああ…大丈夫だよ…。」
ふう…とため息をつくと、3人を安心させるため、1人ずつ頭を撫でた。
「悪い、ちょっと具合が悪くて…立ちくらみがしただけだ。心配しなくていい…」
「そっか…ほんとに大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ。…ごめんおそくなって。お腹すいただろ、ほら、夕飯買ってきたから、食べよう。」
「う、うん!」
立ち上がり、3人を促した。
夕飯を食べ終わり、いつものように3人の遊びに付き合っていると、夜も更け、子供達は規則正しい寝息をたてて眠りについた。
「ったく…ジェシカは相変わらず寝相が悪いな…おいおい、メアリーを蹴るな。苦しがってる。…グミはいつも寝相がいいな。」
大きな布にくるまり、3人並んで寝ているのを眺めるのは心が落ち着く。
頭を軽く撫で、物音を立てぬよう静かに外へ出た。
今夜は月が出ており、街灯のないこのあたりでも、気休め程度だが、ほんのりと明るかった。
扉を背に、その場に座り込み、これからの事を考える。
守らなくては…あいつらを…。
この場所にいれば、今日のように、気づかぬうちに25番に後をつけられてしまい、いつかバレてしまう可能性がある。人の哀しむ様をみるのが好きな25番のことだ。あいつにバレたらすぐに国家にいいつけられてしまう。国家からしたら、破壊予定だった人間兵器の実験体と、指名手配犯をいっぺんに捕まえられるのだから、万々歳である。
「だからって、他に何処へいけばいいんだよ…逃げるにしても、いつどこで何者に遭遇するかもわかんねえし…それに、こんなに都合のいい場所が他にあるとも限らないし…」
しかしそこでふと、あることを思い出した。
「まてよ…?あいつら3人の顔を知っているのは、あの研究所の奴らと僕だけなんだよな…?でも、研究所の奴らは僕があの時すでに全員消し去った…。だから、必然的に、この世に僕一人だけってことになるじゃないか!」
それならば、彼女たちの容姿はこの街をあるいても問題のないものになる。誰も人間兵器のなりかけなどとは思わないだろう。
「なんだ…それがわかれば、あとは簡単じゃないか。」
僕の頭に、ある「作戦」が生まれた。そして、それと同時に、笑みが零れた。
僕は立ち上がり、「作戦」の最初の準備にとりかかるため、懐からナイフを取り出した。
そして、その切っ先を、己に向けた。
ザシュッ…!!!
____翌朝____
チュンチュン…
鳥の鳴く声がきこえ、グミは目を覚ました。
窓の外にみえる色は灰色で、今日は曇りなのだとわかった。
「あ…れ?神様…?」
ふと、いつも誰よりも早く起きている神様の姿がないことに気が付いた。
途端に不安に襲われ、慌ててジェシカとメアリーを揺り起こす。
「ジェシカ、メアリー!起きて!!大変、神様がいないの!」
唐突におこされ、しばらくとろんとした目でグミを見つめたが、状況が理解できると、泣きそうな顔になり、飛び起きた。
「嘘っ…⁈神様どこいっちゃったの⁈」
「置いていかれちゃったのかな…私達が、神様いつも、疲れてるのに、遊んでってわがままばっかり言ってたから…」
「やだっ…ごめんなさい、神様、帰ってきて!もう、わがまま言わないから!」
3人はパニックに陥り、わぁわぁと喚き出した。
しかし、その喧騒は、すぐにおさまった。
何故なら、入口の扉が、ガチャリと音を立てて開いたからだ。 3人は反射的にそちらをみると、涙を浮かべながら微笑んだ。
「神様‼︎」
そこには、すこしだけ容姿のかわった神様が立っていた。
「…どうした?何騒いでるんだ?」
神様は、小さく微笑んだ。
___胸に、大きな秘密を抱えながら。
Ⅶに続く