泥棒と警備員 Ⅲ
お久しぶり…というほどでもありませんね。
こんにちは。
クライスは風邪をひいてしまい、只今声がカスカスになっておりますw
朝夕5錠、昼4錠のお薬はすごくつらいです(´・ω・`)
いえいえ、そうではなく、というかそんなことより!!!
くるりんごさん、おかえりなさあああああああああああああい!!!!
あ、お名前は犬丸芝居小屋さんになったんですよね!
「かごまないで」、とってもよかったです!
とにかく、ずっと待ってました。戻ってきてくれてうれしいです!
さて、そんなくるりんごさんの素晴らしい神曲の解釈小説もついに3話です。
更新ペースが亀並みですみません。
では、本編へどうぞ。
「泥棒と警備員 Ⅲ」
さて、傭兵番号39番、もとい「神様」が3人を引き取ってから数日後…
「神様ー!!今日は何して遊ぶー!?」
僕が気持ちよく寝ていると、遠くの方からジェシカの声が聞こえ、次の瞬間、鳩尾を凄まじい圧迫感が襲った。
「がはっ…!?」
口から空気が漏れ出て、あとからとんでもない痛みが送られてきた。
「おまっ…なにするんだよ!!」
「だって神様、ずーっと呼んでるのに起きないんだもん!」
ぼやける目を擦り、意識を完全に覚醒させると、僕の腹の上に、頬をぷくりと膨らませたジェシカが乗っていた。
要するにこいつは、日も昇っていない朝っぱらから、気持ちよく寝ていた僕の腹に飛び乗ってきたというわけか…
「…ずーっと呼んでるって…今何時だと思ってんだ…」
「え?わかんない…だってこの教会、時計ないもん!」
そういって清々しい笑みを浮かべるジェシカ。
畜生、ふざけやがって…
「お前さ…」
「お前じゃないよ、ジェシカだよ!」
額がピキッという音をたてたのが、自分でもわかった。
「…ジェシカ、早起きは確かにいいことだが、まだ寝ている人間にむかって飛び乗るのはやめろ。いいな?」
ああ、僕は今、きっとものすごい顔をしているんだろうな…
すると僕の怒りがジェシカに伝わったのか、
「うー…ごめんなさい」
そういいながらしょぼくれた顔でのろのろと僕の上からどくジェシカ。
ききわけはいいようだな。
僕は安堵のため息をつき、うなずく。
「よしよし、わかればいいんだよわかれば…ぐうっ!?」
するとまた、鳩尾になにかが勢いよくのっかってきた。
「神様おはよう!今日は起きるのはやいね!」
「……ああ…おかげで散々だよ…メアリー。」
今度は、ジェシカの後ろから、猛ダッシュしてきたメアリーが僕の上に飛び乗ったのだ。
「神様、今日はなにして遊ぶ!?」
「お前らはそれしか言うことないのか!!?」
ああ最悪だ。
こいつら、大変めんどくさい…
まあ、3人のうち1人がまともなだけいいが。
そう思いながら、こんな騒ぎの中でもすよすよと寝ているグミを見つめる。
ちっ、僕はこんな思いをしているのに1人だけ寝やがって…
すると心が通じたのか、グミがぱちりと目を開いた。
「あ…おはよう神様、ジェシカ、メアリー。」
「…ああ。おはよう」
「おはようグミ!!」
「おはよー!よく寝てたね!」
グミは目をこしこしと擦り、ん~と伸びをした。
メアリーは僕の上に乗ったまま、グミに、「ねえ、グミはなにして遊びたい!?」ときいた。
「え…んー。わたしは、みんなが遊びたいあそびでいいよ。」
「グミってば、いっつもそればっかり!たまにはグミが決めてもいいんだよ?」
「でも、ほんとに私はそれでいいの。みんながうれしいと、私もうれしいから…」
こいつ、めっちゃ達観してるな…
このなかだったら、こいつが一番大人かも。
そう思うと、小さな子供が腹に乗ってきただけでキレている僕が、途端に馬鹿らしくなってきた。
「ちぇっ…なんだよ。」
「なにがー?」
「なんでもない。」
「ふふ、変な神様~」
「んね~」
…やっぱりこいつら腹立つ。
と、まあくだらないやりとりをいつものようにする。
…何度目だろうか。
こいつらと一緒に朝をむかえたのは。
さっきジェシカがいったように、ここには時計もなければ、カレンダーもない。
第一、傭兵の僕にはあまり時間は関係ない。
「呼ばれたら任務、呼ばれたら撤退」
兎に角、時間の主導権を握っているのはあいつらで、僕には普段からあまり時計を気にする、という習慣を持ち合わせていないのだった。
……ん?時間…?
ハッと空に目を向けると、日が昇り始めていた。
「ま、まずい!!もう日が昇る!!はやくいかないと罰則くらう!!」
「え~神様、今日もお仕事~?」
「何言ってんだ!!毎日行ってるだろ!今日も遅くなるから、静かに、ばれないようにしてるんだぞ!!」
「「「はーい!」」」
毎度思うのだが、グミは信用できても、どうもメアリーとジェシカは信用できない…
と、そんなことを考えている場合ではない。
急がないとほんとに間に合わない!!
「じゃあ、い…いって…くる」
「「「いってらっしゃーい!!」」」
…まだ、「いってきます」というのが少し恥ずかしい。
母さんが死んでから、「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえり」のやり取りを長い間しなかった。
だって、たとえ「いってきます」「ただいま」を言ったところで、「いってらっしゃい」「おかえり」の声を返してくれる存在が、いなかったのだから…
だが、今は、たとえ子供…それも人間兵器になるところだった子供でも、ちゃんと返してくれる存在ができた。
それがなんだか、恥ずかしいような、うれしいように感じた。
こんな感情、「冷徹非道」の僕には似合わないな…
走る足を速めながら、自然と自虐的な笑みが頬に浮かんでいた。
__________
「遅いぞ!!傭兵番号39番!!常に素早い行動を心掛けろ!!」
「はあ…はあ…すみません」
僕は全力疾走したおかげで、なんとか集合に間に合った。
ち、間に合ったんだからいいじゃねえか。頭の堅いジジイだなクソ…。
ばれないように軽く舌打ちし、列に並んだ。
「今日はいつもより遅かったな、39番。なんかあったのか?」
すると、隣にいた傭兵番号25番が、いつものにやけ面で話しかけてきた。
「うるせえ道化師野郎。毎日性懲りもなく僕に話しかけんな。そんなに喋りたきゃ空気と会話でもしてろ。」
ぎろりと音がしそうなほど鋭い目つきで睨む。
こいつは、任務遂行率が僕とほぼ同じの、通称「道化師の25番」。
そして、僕とともにこの軍のなかで最も恐れられている存在だ。
25番は、とても柔和とは言い難い、胡散臭い雰囲気を醸し出す笑みを常に浮かべていた。
____そう、たとえ人を殺す時でさえ…
僕が唯一上司よりも嫌っている、クソ野郎だ。
そして何故かこいつは、何かにつけて僕に話しかけてくるのだった。
その笑顔の裏に何を隠しているんだか、まったく読み取れない…とにかく気味の悪い奴だ。
今も僕に暴言を吐かれても、まったく表情を変えず、人を食ったような態度でわざとらしく両手を肩まであげ、やれやれと首を振った。
「お~こわこわw今日も機嫌悪いなお前は」
「てめえ…マジでいい加減ぶっ殺すぞ」
僕は本気で苛立ち、さらに凄むが、25番は僕の睨みを受け流し、さらに口角を上げ顔を近づけてきた。
「できもしないくせに…。しってんだぜ?最近お前が人を殺すのをためらってること」
「なっ…!?」
なんでてめえがそんなこと知ってやがる!?
そう言おうとしたが、「おい!!そこ、騒がしいぞ!!」とう上司の怒鳴り声によりかき消された。
朝の話し合いが終わり、直ちに傭兵は任務へと向かうよう命令された。
「んじゃ、またあとでな~『冷徹非道の39番』サン。今日も頑張って人を殺そーぜw」
そう言って25番は走り去っていった。
___しってんだぜ? 最近お前が人を殺すのをためらってること___
脳裏にさっきの25番の言葉が蘇った。
「………五月蠅え…」
_____ああ、畜生。
ほんとにここは胸糞悪ィ…
そんなことを考えながらも、足は街のほうへと向いていった。
Ⅳに続く