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どうぞゆっくりしていってください

泥棒と警備員 Ⅳ

 

こんこんにちは!

クライスです!

 

くそ忙しい準備を乗り越えて、ついに文化祭当日になりましたー!

いや~、楽しいけど、疲れますねw

あと一気に体重が増えますww

 

 

 

ではでは、本編へどうぞ~

 

 

 

 

 

 

「泥棒と警備員 Ⅳ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま…」

 

 

 

くたくたになった体を引きずり、教会に戻ってきた。

 

「「「おかえりなさーーーい!!」」」

 

 

そして、扉を開けたとたん響いた3人の声に少しだけ安堵する。

 

…もし、僕のいない間にこいつらが、あの独裁国家に見つかってしまったら…

 

そう考えると、帰宅して扉を開けるときは少なからず緊張してしまうのだ。

 

「神様今日もおつかれさまー!」

「ねえねえ。今日のごはんなあに~?」

 

メアリーとジェシカはうろちょろと僕の周りを駆け回る。

 

「あー…パンと果物買ってきた…」

 

僕は食料の入った袋をガサリと持ち上げた。

すると、3人が顔を輝かせる。

 

「わーい!ごはんごはん!」

「早く食べよう神様!」

「神様いつもありがとう!」

 

僕は似合わない笑みを自然とこぼしていた。

 

 

…僕は、こいつらと一緒にいると、よく笑う。

 

なぜだろう。こいつらが幸せそうにしているからか…?

ああ、ならば、僕の罪滅ぼしになっているのか。

 

そう思うと、さっきとは違う笑みが浮かんできた。

 

…本当に馬鹿だよな。

僕のこの善意が偽物だなんて気づかずに、幸せそうに笑ってるんだから…。

 

 

 

___だが僕は、胸に抱えた感情の中に、『罪悪感』というものが生まれていることに、この時点ではまだ気づいていなかった

 

 

 

夕食を終えた頃、窓の外の赤い夕陽は沈み、あたりは暗くなってきた。

 

「…そろそろ寝るか…。」

 

夕食も終えたし、もう特にすることはないと思い、僕が床にごろりと寝そべる。

しかし、この3人がこんなに早く寝るわけない。

 

…本当に大変なのは、この後だ。

 

「ええ~!?もう寝ちゃうのー?」

「遊ぼうよ神様ー!!」

「起きて起きてー!」

 

と3人が僕を揺さぶってきた。

 

ほらきた。

こいつら、「お疲れ様」と言うくせに、いっつも仕事を終えた僕と遊ぼうとする。

疲れてるから「お疲れ様」なんだろうが!!それともなにか!?お前らは機械的に「お疲れ様」を発しているのか!?

 

 

僕は口を真一文字に結び、眉を顰めて、寝たふりを決め込む。

 

 

…すると、今朝と同じように、腹部が圧迫される感覚を覚えた。

 

 

「ぐえっ!!」

 

あまりにも苦しかったので、潰れた蛙のような声を発してしまった。

涙目で腹を見ると、やはりジェシカが乗っていた。しかも、その後ろにメアリーまで乗っている。

 

「なんでお前らはいちいち人の腹の上に乗るんだよ!!しかも、勢いよく!多数で!」

 

必死に抗議をすると、ジェシカとメアリーは、きょとん…という顔をした。

 

 

「…だって、神様が今朝、『寝ている人の上に乗るな』って言ったんだよ?それってつまり、『寝てない人の上には乗ってもいい』ってことだよね?」

「神様、今寝てなかったでしょー?」

 

「…おーまーえーらあああ!!」

 

僕はバッと起き上がり、その反動で2人を転がり落とす。

 

「きゃー!神様が怒ったー!!」

「逃げろー!!」

「鬼ごっこ!?鬼ごっこするのー?」

 

はあ…こいつらといると本当に苦労が絶えない。

 

「鬼ごっこなんかするか!疲れてるって言ったろ!!」

 

 

「あ…じゃあ神様、かくれんぼしよう!!」

 

 

グミが珍しく、遊びを提案してきた。

 

 

「…かく…れんぼ…」

 

 

 

…まあ、かくれんぼならそんなに走り回る必要はないし…

 

 

なにより、いつもは遠慮ばかりのグミが遊びを提案してきたことがめずらしいので、許可することにした。

 

「…まあ、かくれんぼなら…いいぞ。」

 

僕がそういうと、3人はとてもうれしそうに笑ってはしゃぎ始めた。

 

「やったやった!!神様が遊んでくれるー!」

「はやく外に行こう!!」

「あ、こらお前ら!!あんまりでかい声で騒ぐなよ!?」

「「「はーい!!」」」

 

 

僕と3人は静かに、教会の庭へとでた。

 

 

「いいか、かくれんぼは許可したが、大騒ぎするのと、あまり遠くへ隠れるの禁止だからな。声が届く範囲で隠れろ。わかったな?」

 

外の人間に僕たちがここに暮らしているのをばれないようにするために、僕は3人に指示を出す。

勿論3人はいつも通り元気な返事をした。

 

 

「ね、鬼はだあれー?」

 

興奮したジェシカがいう。

 

僕は、鬼だけにはなりたくないな…と思った。

 

「じゃんけんできめようよ!」

 

メアリーの発した提案に僕は苦い顔をする。

 

…僕じゃんけんは昔から弱いんだよな…

やめさせようとするが、3人はすでに、「さーいしょはぐー!!」と、じゃんけんを始めている。

ああ~くそ!もういい!勝て!僕!!

 

 

「じゃーんけーんほい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グミ、ジェシカ、メアリーは、チョキ。

僕は一人だけパー。

 

 

 

 

 

 

畜生、負けた…。 

こうして僕は鬼を被ってしまったのだ。

 

思わずため息がでる。

 

 

「やったー!じゃあ、神様が鬼ね!!」

「ちゃんと目をつぶって、30秒数えてよー!」

「わーい、かくれろかくれろー!!」

 

3人は、長い間研究施設に閉じ込められていたとはおもえないようなスピードで、嬉しそうに隠れていった。

 

「はあ…心底めんどくさい…」

 

仕方なく僕は、心に「罪滅ぼしのため」と書いた紙を貼り、木に寄りかかって目を瞑った。

 

「30ー、29-、28-…」

 

 

 

 

 

 

 

 

…僕は、何をしているんだろう…

 

数を数えるという単調な作業をしていたせいだからだろうか。

僕の脳裏にハッとその言葉が横切った。

 

こんなところ知り合いにでも見つかったら、僕は間違いないく鉄格子の中に押し込められる。

いくら罪滅ぼしとはいえ、このままじゃ、これじゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世間的に僕の立ち位置が、危ないんだよな…

 

 

 

 

 

「…3、2、1、0…もういいか?」

 

目を開け、3人に呼び掛ける。

 

 

 

「「「もういいよー!!」」」

 

 

 

実に楽しそうな声が帰ってくる。

 

呑気なもんだよな…僕がこんなに悩んでるっていうのに。

 

 

 

 

 

…そうだ。

あいつらももうこの生活に慣れてきただろうし…

僕も、十分罪滅ぼしはしただろう。

 

 

 

 

_____こいつらを、此処に捨てていこうか。

 

このかくれんぼが終わったら、僕は出ていこう。

なんせ、いつこいつらといるところを誰にみられるか、分からないのだから。

 

 

 

 

 

 

一般常識もろくに知らず、実験施設に監禁されていた幼い少女達を捨てていって、無事だという可能性は限りなく0に近かったが、せりあがった不安を今から押し込めることは僕には不可能だった。

 

 

…よし、ならさっさとあいつらを見つけて、こんなくだらない遊びを終わらせて、準備に取り掛かろう。

 

 

そう決意を固めこむと、俄然やる気が出てきた。

 

 

まあ、声が聞こえる範囲ということは、見つけるのも簡単___

 

 

 

 

その考え通り、すぐさま植え込みに紛れたジェシカの黒髪が目に入った。

 

 

 

ジェシカ、見つけた。」

 

 

 

あと2人…

 

 

 

 

 

「あー!みつかっちゃった!神様、見つけるの早いよお~」

「そんな簡単なところに隠れたら、誰にだってすぐ見つかるぞ。」

「次こそは神様に降参っていわせちゃうもんね!」

「は、そんなこと無理に決まってるだろ。」

 

 

 

____次なんて、ないんだから。

 

 

 

 

「さ、あとはメアリーとグミだな。」

 

 

ぐるりとあたりを見回すと、小さく、「カサッ…」ときこえてきた。

 

 

僕は、しめた、と思い、そのあたりにゆっくり近づく。

 

しかし、あたりはどちらもいない。

 

 

気のせいか…?と思い、そこから離れようとしたとき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサガサッ…ドサッ!!!

 

 

 

 

「きゃあ!」

 

 

 

さほど背の高くない木から、植え込みにメアリーが悲鳴を上げて落ちてきた。

 

「メアリー見つけた…って、木の上に隠れるなんて危ないなお前…」

「えへへ、見つかっちゃった~」

 

 

 

 

 

あと、1人…

 

 

 

グミは頭がいいから、見つけにくいところに隠れそうだなと考え、僕は教会の裏へ回った。

 

 

しかし、教会の裏でも、グミは実に分かりやすく、ただ茂みにしゃがみこんでいるだけだった。

 

 

 

まあ、いい。

好都合だと思い、茂みをかきわけた。

 

 

「グミ、見つけた。」

 

 

 

「あ…見つかっちゃった!えへへ…」

 

 

 

グミは恥ずかしそうに笑って、立ち上がった。

 

 

僕はにやりと笑い、「さ、全員見つけたから終わりだ。帰るぞ」と、3人を教会の中へ誘おうとした。

 

しかし、

 

「ちょっと待って神様!」

 

グミが僕を引き留めた。

 

 

「…あ?なんだよ」

 

 

僕が振り返り、3人を見ると、3人は並び、真ん中のグミだけが手を後ろに回していた。

 

 

 

「…なんだ?グミ、何を持ってるんだ」

 

 

 

 

そう問いかけると、グミは待ってましたと言わんばかりに、にこりと優しい笑みを浮かべて、両手を僕に突き出した。

 

 

 

___いや、正確には、手に持っている小さな白い、一輪の花を突き出した。

 

 

 

「なんだよ…これ」

 

 

僕は戸惑い、目を瞬かせる。

 

 

すると3人は声をそろえて、言った。

 

 

 

 

「「「神様、いつもありがとう!!」」」

 

 

 

 

 

「…え」

 

 

 

 

突然のことに、先ほどまでの汚い思考が止まった。

 

 

 

「神様、いつも私たちのお世話してくれるから、なにかお礼しようって考えたの。」

「それで、神様に見つかる前に1人ずつなにかいいものを探そうって思いついたんだ。」

「でも結局…私たち2人はすぐ見つかっちゃったから、あげられるのはグミがみつけたお花だけなんだよね…」

「こんなものしかあげられない私たちだけど…これからも一緒にいてくれたら嬉しいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____その瞬間、僕の中で何かが切れた。

 

 

 

 

 

 

それはおそらく、何よりも自分のことが大事、という価値観だ。

 

 

 

 

途端に先ほどまで考えていたことがどうでもよくなり、気づけばその花を手に取っていた。

 

 

「ああ…ありがとう」

 

 

 

 

 

 

ああ、僕はなんて卑怯な人間なんだ。

先ほどまで考えていた、僕のあの汚い思いはまるで最初からなかったかのように、平然とこいつらの前でいい顔をする。

 

 

 

何も知らない、お前たち3人。

この花の白さのように綺麗な心のお前たち3人。

 

お前たちは、僕がなんとかしてみせる。

守ってみせる。

 

だから、お前たちが僕を必要としなくなるその時まで、

 

こんなにも下賤で汚い僕を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その澄んだ美しい目で、みていてくれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅴに続く…