Welcome to the garden of the story

どうぞゆっくりしていってください

FLOWER! 第17話 ~期末試験 其の四~


【初音ミク (Hatsune Miku)】氷の世界【オリジナル曲】 - YouTube

 

 ↑犬丸芝居小屋さんの記念すべき1作目の動画でございます

 

 

「FLOWER! 第17話 ~期末試験 其の四~」

 

 

 

 

 

「よ~っし、じゃあ、はやいとこ花作っちゃわないとね!」

 

そう言って早速構えをとるヤヅル。

慌ててミルも手を前に伸ばす。

 

 

 

 

_____開眼!!

 

 

 

 

ぶわりと風が吹き、花弁と葉がばらばらと舞い上がっていく。

 

花弁が集まり、大きな花の蕾を作り上げていく。

そして、二人の蕾がほぼ同時に出来上がった。

 

二人は一層気を引き締め、念じた。

 

 

 

 

 

『開花!!!!』

 

 

 

 

ミルは桃色の、ヤヅルは薄紫の蕾を開いた。

 

 

 

 

 

「私の技は…『眠り花(ファンシースリーピー)』!!」

「うっわ、なにそれかわいい!!

でも、あたしも負けないよ!!あたしは、『星霜月華(アンダーミッドナイト)』で勝負!!」

 

ミルの「花」からは桃色の花の塊が次々と現れ、ヤヅルの「花」からは織物のようにひらひらと漂う薄紫の蔓が現れた。

 

 

 

「試合開始!!」

 

カザキの鋭い声を合図に、二人はいっせいに走り出した。

 

 

 

「うひゃー!さすがだこりゃ!!めっちゃ速い!」

 

そういいながらミルのばらまく花をよけ、攻撃を繰り出すヤヅル。

 

「そ、そんなことないよ!?もうすごい必死…!!」

 

一方のミルは冷や汗を流しながらヤヅルの攻撃を花の礫で受け止める。

カラーやネストのように派手な技や豪快なアクロバットはないが、それでも負けず劣らずの勢いだ。

 

「…ところでさーミルちゃん…よっと!」

「わ!な、なあに…?」

 

ヤヅルは不思議そうな顔をしてミルに問いかける。

 

「ミルちゃんの『花』って、『眠り花』っていうじゃん?それってさ、何を眠らせる花なの?」

 

その問いに対してミルは優しい笑みで、

「私が眠らせるのは、対戦相手の『花』だよ。触れられた『花』は、『機能停止(スリープモード)』になって、蕾に戻って消えちゃうの。」

と答えた。

 

「え!?まじか…じゃあ、あたしの『花』にミルちゃんの攻撃が一発でも当たったら、あたしの負けってこと!?」

「うん…まあ、言っちゃうと、そういうこと。」

「えええ~!!やっば、負けちゃうかも!!」

 

地面に膝をついて大げさに落ち込むヤヅル。

そのお陰で、『花』の前ががら空きになった。

思ってもみなかったチャンスに、ミルは躊躇いながらも、「ごめんね!」と言って両サイドから花を放り込んだ。

 

しかし、

「______…でも」

 

ヤヅルはすさまじい速さで両腕をクロスさせ、紫に輝く蔓の束でミルの花を散らした。

そして、ゆっくりと顔を上げ微笑んだ。

 

「裏を返せばそれは、『一発も当てなければ』いいってことでしょ?」

 

___ヤヅルが攻撃を防御した時の風圧で舞い上がったポニーテールが、元の位置に戻る前に、ヤヅルの姿は消えていた。

 

 

ハッとしてミルが頭上を見上げると、真剣な笑みを携えたヤヅルが、蔓を『花』に向け放った。

 

「きゃっ…!!」

 

間一髪のところで直撃は避けたが、ミルの『花』が嫌な音をたてた。

 

花びらの塊で押し返されたヤヅルは、ハイヒールの音を響かせ着地した。

 

「…流れ星っていうのはさ、現れてから消えるまでが、すごい早いの。『刹那』って言葉がまさにそれ。…だから_」

 

 

そういうとヤヅルはまたも姿をくらました。

…いや、正確には、早すぎてその軌道が殆どみえないのだ。

 

ミルは慌ててまた頭上を見上げたが、今度はヤヅルはいなかった。

…そのかわりに、今度は下から声がした。

 

 

 

 

「お願い事をする暇も、ないんだよねえ」

 

 

 

パアンッ…!!!

 

 

 

「ミルッ…!!!」

 

ライトの声が響いた。

 

 

 

ミルの『花』には、大きな傷ができてしまった。

破壊されるまでには至らなかったが、今の攻撃で5割前後のダメージを負ったのは確かだ。

 

 

「は、はやすぎる…!!!」

 

 

ミルが顔を青くして攻撃を繰り出すも、すべて相殺されてしまう。

 

「遅いよミルちゃん!!ちゃんとあたしのスピードに追い付いてきて!!」

 

 

それからは、ずっとヤヅルのペースに追い付けず、どんどんミルの『花』に傷がついていく。

 

 

 

「おい…これ、やべえんじゃねえか…!?」

「ミルたん…!!」

「ミル、ファイトや!」

 

ライトたちはひたすらミルを応援し続けた。

 

 

 

しかし、ミルの限界は近いようで、だんだんと『花』からは生気が失われていった。

 

「もう、一発でもくらったらアウトや…!何とかして、あの速さに追い付かな…ああ!?」

 

突然ネストが大きな声を上げたので、急いでミルの方を振り向くと、ミルがつまずき、転んでしまっていた。

 

「きゃッ…!!」

 

「あちゃー…こんな勝ち方はあんまりしたくないんだけどなー…まあでも、勝負だから…勝たせてもらうよ、ミルちゃん!!」

 

 

その隙に、ヤヅルが最後の攻撃を放った。

 

 

「もうだめ…!!!」

 

 

 

 

パアアアアン…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…な、なんで!?」

 

 

 

 

_____大きな音を響かせ弾け飛んだのは、ミルの『花』ではなく、ヤヅルの蔓だった。

 

 

 

 

 

「…ごめんねヤヅルちゃん!!私…嘘ついちゃった。」

 

 

「え、ええええ!?」

 

突然のことに、驚きを隠せないヤヅル。

周りの生徒たちも、完全にヤヅルの勝利を確信していたはずだった。

 

 

「な、なんだ!?今、何が起こった…?」

「わかんないにょ…」

「!!あんた等、ヤヅルの『花』見てみ!?」

 

その声に、全員がヤヅルの『花』を振り向く。

 

 

「____あ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スリープモード…!?」

 

 

 

 

 

そう。

何故かヤヅルの花は、スリープモードになり始めていたのだ。

 

 

 

 

 

「な、なんで…!?は、まさか…嘘って…」

 

 

「うん…私、『花』に「触れられたら」っていったけど、本当は、相手の攻撃が私の『花』に「触れて」も、スリープモードになっちゃうんだ…」

 

 

軽く肩をすくませながら、実に愛らしい顔で、「てへッ」という効果音が聞こえそうなポーズをするミル。

ヤヅルは青い顔で呆然とその場に立ち尽くした。

 

 

「でもね、『触れられた』ってだけじゃ、攻撃を封じ込めることしかできなくて…完全なスリープモードにはできないんだ。…やっぱり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

触れないと…ね?」

 

 

ウインクを一つするミル。

ヤヅルは、「しまった!!」と、防御を作ろうとするも…

 

 

時、すでに遅し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『眠り花(ファンシースリーピー)』ーー…!!!」

 

 

 

 

 

 

ミルの花の礫が、ヤヅルの『花』を包み込んだ。

 

 

次第に『花』が小さくなっていき、最後は…

 

 

 

 

 

 

ブワアアッ…!!!!

 

 

 

 

 

 

_____桃色の花弁と、紫色の花弁が、宙を美しく舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おやすみなさい。」

 

 

 

 

 

 

「勝者、神威御琉!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く…✿