ネオンの眠らぬ街にて道化師は囁く ～Ｎｉｇｈｔ ｄｕｈ ｄｅｃｅｉｖｅ～

「ネオンの眠らぬ街にて道化師は囁く　～Ｎｉｇｈｔ　ｄｕｈ　ｄｅｃｅｉｖｅ～」

ビルディングの窓から射す光

彩られた様々な看板の光

途絶えない車のライトの光

夜道を照らしだす外灯の光

光　光　光　光…

どこも見ても光ばかり

ここはネオンが眠らぬ、不眠不休の街…

そんなネオンカラーの光を浴びて輝く、つまらない大人達

仕事に追われ、心身ともにくたくたなのに、それでも見栄をはってスタスタと歩く会社員。

数人で群がり、バカ騒ぎしながら、きつい色のネオンを放つ店へとはいっていく遊び人。

派手な格好で男に媚び、何かを貰うと心の底から嬉しむような顔で礼を告げるが、実際はその事目当ての二重人格者。

汚い

醜い

つまらない

くだらない

そんな大人たちを、廃ビルの屋上から眺める…

夜が好きな僕…そう。

『鹿野　修哉』

今日も一日貼り続けていた仮面を取り、ふう…とため息をつく。

「うーん…いつ見てもここからの景色は最高だねえ～」

ここにいれば、色んなものが沢山みえる…

愛、友情、絆、夢、努力…

嫉妬、嫌悪、絶望、傲慢…

そして…

　　　　　　　　　　　　　　　　　「『嘘』」

「くくく…なんていい響きだろう…。

汚い大人達をなんの躊躇いもなく照らし出すネオン！そしてそれを眺めている僕！さらに、その僕までもが汚い人間！！オーマイダーティー！なんて醜態！！あはっあははっははははは！！！！」

狂った世界で狂った僕が狂ったように嗤う。

おかしくておかしくて、おかしくなってしまそうだ

「はあ…で、今日はキドに何発殴られたんだっけ？」

にやにやと不気味な笑みを浮かべて、服をめくり上げる。

「あ～らら。これまた今日は一段と傷がおおいな～」

脇腹は青くなり、鳩尾は少し腫れていた。

「もう少しキド加減してくれないかなあ…

ま、僕が悪いんだけどさｗ」

ふと、キドに殴られた以外の傷が目に入る。

ずっと昔からある数か所の傷。

「これは、

お母さんが僕を殴ったとき

これは、

お母さんが僕に物をぶつけたとき

これは…　　　　

いいや、やめよーっと。大体、あの頃は、僕が全部いけなかったんだ。なのに、なにを今更古傷眺めて感傷に浸ってんだアホらしい。」

眉をよせ、さもつまらなさそうに服を戻す。

お母さんは僕のせいで悲しんだ

お母さんは僕のせいで僕に暴力をふるった

お母さんは僕のせいで…　　　　

死んだ

「………くだらねえ…」

後悔しても、謝っても、嘆いても届かないものに手を伸ばしたって、届くわけがない。

ましてや醜い僕なんかが。

でもそんなことは充分わかっている。

だからここに来ているんだ。

大事な幼馴染のキドとセトにも、

純粋なマリーにも、

明るいキサラギちゃんにも、

天真爛漫なエネちゃんにも、

少し残念だけど優しいシンタロー君にも、

毒舌かつ冷静なヒビヤ君にも、

マイペースなコノハ君にも…

嘘を演じきっている醜い僕が…

こんな汚い大人達よりは…

ましだと思いたいから

だから毎日ここへきて、毎日確認する

「醜い僕は今日も…

綺麗に嘘を演じていられましたか…？」

「ぶはっ」

なんちゃってｗｗｗｗｗ

「帰っても来ない返事に期待して、毎日自問自答するなんて…心の底から哀れだよねえ…ｗ」

『ぽたり』

あれ？

おかしいな

なんで僕の両目から

悲しみが滴り落ちてるの…？

「あぁ、ミスちゃった…」

今日も不気味な道化師は…

ネオンの眠らぬ街で…

自分を殺しました…。

ＥＮＤ